お盆成人式をコミュニティーセンターで開催、対象者21人の内12名が出席した。横田奈々美さんに成人証書を手渡し、三瓶拳也さんが、「感謝の気持ちを忘れないで、ふるさと川内村のために貢献していきたい」と力強く誓いの言葉を述べた。
式の後、当時の川内中学校担任であった猪狩 孝先生が、「新成人に伝えたいこと」のテーマで講演した。
震災・原発事故が発生した2011年3月11日、成人を迎えた皆さんは中学校の卒業式を終え、希望あふれる高校1年生となる予定であった。しかし、卒業式のその日の午後に発生した原発事故によって避難を余儀なくされ、県内だけではなく東京、埼玉、千葉、新潟などに避難し、避難先学校への編入・転学、またはサテライト校での学習、更に仮設や借り上げアパートで不便・不安な生活を送ってきた。それを乗り越え成人を迎えた皆さんに心からの敬意を表したい。4年5か月、様々な復興事業を進めてきたが、復興の最大の成果は皆さん自身ではないだろうか。本当にうれしい。
「足るを知る者は富む」は老子の言葉。文明の発達には人の生活を豊かで、快適なものにする側面と清貧の思想や命の大切さを忘れさせてしまう側面がある。依存心が高く、与えられることが当然と考える風潮、まさに文明の発達がもたらした弊害と言えるかもしれない。このような時代に生きる私たちは何をすべきか。
自分の足で歩き汗をかくこと。寒さや暑さに耐えながら生きる努力を続けるのが本来の姿、そこから生きる喜びや自然と共生することを学び、文明を築いてきたのではないだろうか。際限ない豊かさや便利な生活を創造していくあまり、長い年月をかけて築き上げてきた大切なものを失おうとしている。今回の試練もそのことへの警鐘であり、復興していくための本質なのかもしれない。
これまで私たちは震災・原発事故で避難を余儀なくされ不安な生活を経験してきた。先行きが見えない状況の中で、誰もが未来を知りたいと思ったに違いない。しかし残念なことに誰にも未来は分からない。でも今やるべきことがある。それは少しでも前に進むこと。「ふるさと」はかけがえのないもの、戻らないと決めた人にとってもそれはよりどころ。それを取り戻すために少しづつ前に進んでいきたい。新たな可能性に挑戦していかれることを期待する。成人、おめでとう。