「被災地からの脱却」
日本の原風景を残す当村は、東日本大震災と原発事故により「被災地」と呼ばれる地域となった。
全村が避難したことで、仲の良かった隣近所や家族までもがてんでんばらばらとなり、現在の帰村者は64%の1,770名。この数字は本来20年以上先の推定人口であり、一気に数十年後の未来を目の前に突きつけられた。加えて、子どもを持つ世帯など若い世帯が利便性の良い避難先に定着しつつあり、帰還した多くの世帯は高齢者が多く、人口減少と併せ少子高齢化が進んだ。
村民は避難を余儀なくされ不安な生活を経験してきた。先行きが見えない中、誰もが未来を知りたいと思った。しかし、残念ながら誰にも未来は分からない。でも、今やるべきことがある。それは少しでも前に進むことだと思う。「ふるさと」は、かけがえのないもの、戻らないと決めた人にとっても、それは拠り所だと思う。それを取り戻すために最大限努力していく。
急激な人口減少と少子高齢化が進み、地方自治体は生き残りに向けて次のステージに突入しつつある。復興を果たすとともに将来をイメージした村づくりにも同時進行で取り組まなければならない。選択と集中、今、自治体にはアイデアが求められている。当村の場合、自然豊かなポテンシャルを生かし、癒やしやリラックス空間を提供できることが強みだ。「戻る」「戻らない」という選択肢の外、当村に可能性を見出し、行ってみようと考えている人達、いわゆる新たな住民やサポーターをどう取り込むかという視点も必要。本当に復興を成し遂げようとするなら、「被災地」であることにいつまでも甘んじているわけにはいかない。
復興へはまだ道半ばだが、県内外からの多くの御支援や村民をはじめ多くの方の知恵と力を合わせ、新たな川内を創造し、いち早く「被災地」から脱却することが双葉郡の復興ひいては福島の復興にも繋がると考えている。