15日、平成28年度川内村成人式を実施、希望と人生への夢や期待に胸を膨らませ、若さ溢れる29名の内21名が出席。原発事故以来久しぶりの再開を喜んでいた。
今年度の成人者が生まれた平成8年から9年は、アトランタ・オリンピックが開催され日本選手が14個のメダルを獲得した年。更に円高が進み、景気低迷が心配される平成の不況から新たな経済の芽生えを偲ばせる最中に誕生した。誕生の瞬間皆さんのご両親はやご家族は心から喜ばれたものと思う。あれから、20年の歳月が過ぎ様々な苦労や経験をして、本日の成人式を迎えることとなった。どうぞご家族の方に心を込めて「ありがとう」を伝えてほしい。
平成23年3月11日当日は、中学校の2年生として先輩方の卒業式の日、震災と原発事故によってその日以降全村民が避難を余儀なくされた。その後住み慣れた故郷に再び戻って学ぶことができず、今日再会している旧友や家族とも離れ離れとなり、県内はもとより北海道や関東等へ避難を余儀なくされ、避難生活や避難先学校への編入・転学またサテライト校での学習、仮設やアパートで不安な生活を強いられ、それを乗り越えここに成人を迎えた皆さんに敬意を表したい。川内村の復興の成果は、みなさん一人ひとりの努力の姿そのものだと思っている。
「足るを知る者は富む」は老子の言葉。文明の発達には、人の生活を豊かで、快適なものにする側面と清貧の思想や命の大切さを忘れさせてしまう側面がある。依存心が高く、与えられることが当然と考える風潮、まさに文明の発達がもたらした弊害といえる。このような時代に生きる私たちはいったい何をすべきなのか。
自分の足で歩き、汗をかくこと。寒さや暑さに耐えながら生きる努力を続けるのが人間本来の姿であり、そこから生きる喜びや自然と共生することを学び、文明を築いてきたのではないだろうか。際限ない豊かさや便利な生活を創造していくあまり、長い年月をかけて築き上げてきた大切なものを失おうとしている。今回の試練もそのことへの警鐘であり、復興していくための本質なのかもしれない。
今回の原発事故により急激に過疎化や少子化が進んでいる。復興に向けた取り組みの中で、何を守り後世に伝えていくのか、変えていくべきことは何か。それらを自分たちで考え、決めていかなければならない。 私はこの豊かな自然と、人と人との助け合いの精神を守り、「自己中心」から「他者中心」への考えや行動ができる村、都会のような便利さはないが安心して生活できる村づくりを進めていきたいと考えている。ぜひ、力を貸してほしい。